オマ舘の前庭の桑の実

精霊降誕祭は5月の半ば頃で、南仏オマの舘へ行くと前庭に桑の実が色づいている。オマもコブラもこのファミリーメンバーの背丈だと楽に実に手を伸ばしているが、クマにはあと少しで手の届かない高さである。よじ登って心地よい位置に落ち…

住み込みノラと座り込みロバ

寝たきりでしばらく過ごしていた老母ロバが、起き上がって日中は寝床から這い出して、厠に通ったりTV を食いつきそうな距離で眺めたりするようになった。薄い座布団をお尻に当てて、手足の使える部分で畳の上を漕いでどこへでも行く。…

ハイヒール・フィットネス

<ハイヒール・フィットネス>   ハイヒールシューズをトレーニング用具として考えると付き合い方がわかりやすい。いったい誰が、スキーやスケート靴を履いて通勤するだろう。。スキーは雪、スケートは氷、ハイヒールはパーティ会場や…

波間のアザラシたち

わかっていても、イナムラガサキを廻って正面に雪の冠を戴いた富士山が現れるたびに、度肝を抜かれ息を呑む。左手を見下ろすと板に乗ったアザラシたちが波間に浮かんでいる。富士山とアザラシを見物するには、この海沿いの道路が多少渋滞…

寝ついたロバ

朝は蒸しタオルを二つ用意して、一つは背中に当て、もう一つはご臨終場面のように顔にかぶせると、老母のロバが、あ~気持ちがいい、とつぶやく。暮れから寝ついて二か月も顔を洗いに行っていない。けれども寝たきりというには、ずいぶん…

ノラの家出騒動

野良育ちのノラは、気に入らないことがあると、2~3日分の着替えとおやつにパスモとお小遣いの入った財布を手際よくリュックに詰めて、家出するからねと言うのが癖である。クマは、あらそう。。と応え、ロバからは、いつ帰ってくるの?…

クマの庭

雨上がりの庭は緑が勢いづいて鬱蒼としてきた。クマは農耕種族ではない。この海辺の街の高台の一軒家に越してきたとき、庭は綺麗に整地され先住人の庭木は跡形もなくなっていた。柔らかい雑草が生えて伸び風に吹かれるのを眺めて暮らして…

逝きざま

ものを言うことも書くこともできないときがしばらく続いた。失っていた言葉が少しずつ押し出されるように出てきたのは、バラが逝ってからだった。バラは逝く時が近づいたのを知ると、すぐに仕事を辞め、奥の部屋で寝たり起きたりしながら…