ドラクマ ストーリー

ノラとコロ難

この春、タコツボ小動物学校を卒業したノラが、カササギ中動物学校に入学して間もなく、高熱を出した。幸か不幸か週末であったため、一日寝かして氷水袋で頭を冷やし、月曜の朝には平熱に戻った。しかしながらご時世である。クマの生業は…

クマの庭

雨上がりの庭は緑が勢いづいて鬱蒼としてきた。クマは農耕種族ではない。この海辺の街の高台の一軒家に越してきたとき、庭は綺麗に整地され先住人の庭木は跡形もなくなっていた。柔らかい雑草が生えて伸び風に吹かれるのを眺めて暮らして…

逝きざま

ものを言うことも書くこともできないときがしばらく続いた。失っていた言葉が少しずつ押し出されるように出てきたのは、バラが逝ってからだった。バラは逝く時が近づいたのを知ると、すぐに仕事を辞め、奥の部屋で寝たり起きたりしながら…

卒業

駐機場は飛行機が少なくて閑散としている。欠航便が相次ぎ、チェックインカウンターでは複数名のスタッフに取り囲まれ、いつになく手厚い接遇を受ける。ドラの出発には例のごとく家族総出で空港まで見送った。   ドラは家族…

ノラの運動会

集団心理というものだろうか、運動会ではよく泣かされる。去年に続き今年はさらに泣かされた。姪のノラが後ろの方から疾走してくる姿によくぞ大きくなったなあと感動するのとは違う。そういった個人的感傷とは異質のものである。 ある一…