ドラクマ ~フランス編その②~

マニュアルトランスミッションは実に15年ぶりで、しかもフランスは右側通行である。そしてこの山中の村は、坂道だらけで、いろは坂みたいなヘアピンカーブの連続を登り降りしなければ、日常の買い物にも行けない。坂道発進の難所もある。ビビるクマと、免許取りたてのドラで、買い物ドライブに行くことになった。腕はどうあれ、双方フランスで運転したいのだ。

お決まりのウィンカーを上げたらワイパーが作動する、という間違いを何遍もやらかして、ドラにバカにされながら坂を下った。田舎では交差点はほとんどサークル方式で、左側優先でスームーズに出入りしなければならないのに、エンストだ…。買い物を済ませ、帰り道はドラに交代した。

意外にも、シフトチェンジはドラの方がスムーズだ。教習でやってから日が浅いし、と思っていたら、スピードをガンガン上げるのみで、下げることを知らない。しかも、コーナーリングが上手くないので、縁石に乗り上げてキャーッと言っている。下りカーブで右側崖というポイントでだ。南フランスの山中の村で、日本から来た動物二頭が乗った自動車が崖から転落事件、という見出しが脳裏をよぎった。

オマは娘時代、ウマを乗り回すじゃじゃ馬娘だった。当時の乗馬服でウマを走らす姿が、デッサン画になって壁に架かっており、何ともカッコウがよい。車の運転は荒い。いろは坂では気分が悪くなりそうだった。それが、今回は村内は運転するが、いろは坂を下る遠距離ドライブは疲れるので、他者に頼んでいる。

運転が上手いのでオマから信頼されているジャスミンがやってきた。また朝のクロワッサンだ。彼女は生粋だから、ミルクカフェに浸して食している。クロワッサンにジャムを塗り、さらに浸すっていうのは感心しないわね~、カフェが美味しくなくなるわ、とドイツ産のオマ。食文化の違いは越えられない。

毎週金曜日のカフェタイムは、ラバが自家農園から卵とご自慢のドイツ式ライ麦パンを配達しに来る。糖尿病なので糖分制限しているのだが、週に一度は解禁日を設けて、ここでケーキを最低5切れは食べる。この日は、オマの即席レモンケーキにクマの力作抹茶テラミスも並べてある。ここフランスにあって、ドイツ食文化を守る小さな集いは、小さな赤ん坊だったドラを抱えたクマが来たときに、すでに始まっていた。ラバの農園のキャンピングカーに泊めてもらってから、20年近くが経っている。

まだ、つづく。。。