目覚めと勝負

このところ冬眠から覚めた心地がしている。過去2シーズンは冬眠する間がなかった、というか寝ているどころではなかったのだ。石の上にもで、とにかく3年経ち、どうやらこの土地に落ち着いてきた。冬の間の出来事はまるで夢の中のようで、目が覚めてさあこれから始めるぞという感じなのだ。

クマは天然のファイターである。つまらない事に勝負を賭ける。昔、スーパーマーケットのレジで並んでいるときに、カゴの中の商品の値段を暗算し、自分の会計の時に小銭をそろえておくゲームにファイトを燃やした。相手方が指で数字を打つのを辞めてバーコードを読み取るようになり、挑むのがバカらしくなった。

通勤ラッシュの駅を疾風のごとくすり抜けるのを得意技としていた。行く先の方向を見定めると、最短距離にしか進まない。時々サイドステップを踏む時もあるが、他者に道を譲ったことがほとんどない。最近パワーの無いときに、道を譲ってばかりいるか、どっちに進んでも八方塞がりということがあった。どうやら、パワーがあると勢いで他者が道を空けてくれているのだ、ということがわかった。

街のフツウの自転車漕ぎの中では断トツに速い。サドルに腰を降ろしてはいるが載っていない。体重はペダルの上で常に駆けっこしている状態でいる。ミュンヘン時代は、中古でも頑強でよく走る自転車が簡単に手に入り、遠出をした。街からアウトバーンの側道を2時間ぐらい疾走すると、湖畔にたどり着ける。格好がワンピースにサンダル履きとフツウなので、細タイヤでヘルメットに流体抵抗を考慮したピッタリウェアと装備万全の自転車漕ぎには、簡単に抜かされる。体格からして違うのだ。

カマクラの浜で、いつものようにお弁当を広げて青空を見上げる。ここではトンビと勝負する。1度目は完全に不覚を取られたが、相手もパンを取り損ねて砂に落としている。2度目は、夢中で弁当箱をつついているときに後ろから攻撃を受け、相手は箸一本だけでやはり砂に落として去った。その後は、徹底して空を見据えながら、お弁当を食べている。狙われたら、指鉄砲で狙いを定めてドッカーンと言ってみるが、怯む気配もない。しかしながら、不意打ち以外では向かってこない。

挑むことに情熱を燃やしてきた。ハタと真っ向から立ち向かう事に、それがどうしたのだと思うようになった。冬眠から覚めると、勝負にでるのが常である。今季のクマ、持ち前の無鉄砲に抑制が利いてどう出るか。