ドラクマ~季節の行方~

<登場動物>

浦島クマ:帰国時の根っこ植替え衝撃から根付き始めた、シングルマザー歴20年。

ドラ:クマの娘、猛獣高校を卒業後、放浪と家事手伝い中。

ノラ:クマの姪、野良で育ち、帰国後のクマに拾われた、小動物学校生。

ロバ:クマの母、独り所帯にクマたちに転がり込まれた、頑強者。

<あらすじ>

海辺の街の高台の一軒家に引っ越して早1年。クマの一家の変化も激しい。クマは一家の大黒柱兼主婦の役を立ち回ってみたものの、所詮無理というもの。ご飯を作るのはアタシの仕事じゃあなあい、と宣言し、あっけにとられるノラとロバ。都合よく帰宅したドラがおさんどんを始め、赤ちゃんが欲しいな~とつぶやいている。またか。。。

*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

梅雨に入ったようだ。クマは火と風のエレメントが強いので、水と湿気に溢れるこの季節が、バランスが整うのか軽やかな元気が出て大好きなのだ。洗い流された空気が爽やかさで瑞々しい、加えて夏至に向けた光が明るい。尤も、季節はつかみどころがなく、カオスの様相を呈している。暑さと紙一重の処に寒さがある。今季は、冬眠から覚めた気がしない。どうもまだ眠っているような気がする。目覚めには、何か、新しいエネルギーのようなものを感じてもよさそうなものだ。季節は、新世界の到来にはまだ早いのだ、と告げているのかもしれない。寒くても暑くてもへっちゃらな心身に今は鍛えて備える時なのだ。カオスの後に新世界がやってくるに違いない。

北米大陸から戻ったドラが、しばらくして南米大陸へ渡り、また戻ってきた。よっぽど家の居心地がよいのだろう。行っても帰ってくる。バックパックが全く様にならない。軽いものから順に詰めて重さのバランスをとるやり方を行く前に伝授しておいたが、バックパックを壊して帰ってきた。ドラのやることなす事カオティックに見えて仕方がない。まるで季節と同じだ。ドラが生まれた時には、神々しい美しさに、自分の子供とは到底思えず、これは神様からの授かりもので預かりものだ、と思ったものだ。ふと思い出して、こんなドラも神様にお返しする時がとうに来ているのだ。どうりで手に負えないとか、とてもじゃないけど一緒にいられないわという感覚は、神様からのサインで、有難い気づきをもたらしてくれる。

最近ノラが家族全員にお守りを作ってくれた。小さく切った厚紙二枚を張り合わせ、丸出しのクレヨンしんちゃんシールの装飾が施してある。裏側には、ノラがついているからね、と書いてある。張り合わせの隙間から、さらに小さい紙片が覗いていて、取り出すとノラの絵が描いてある。これは非常に効力がありそうだ。クマは普段お守りやお札などに興味が湧かない。神仏にお願いするよりも、ノラがついている方が、ワクワク感があってなんだか大丈夫な気がしてくる。ところがノラが、お守り回収するからね、と一方的に言ってきた。あんまりだ。ドラもロバも取り上げられている。お守りの行方が気になる。

いよいよ歳をとってきたロバがフィットネスに通い始め、なんでも筋力強化をするのだそうだ。面白い。クマは、最小限の努力でパフォーマンスを上げる修行をしているので、筋力強化に興味が湧かない。お互いに長らく遠く離れて暮らして今さらながら同居を始たが、ロバが母親だと思うといささか鬱陶しい。昔からよく知っているオバアさんだと思うことにしている。いくつになっても母親は鬱陶しく、娘はうるさい。その上に、ノラは母がいないので、4名揃うと妙なバランスとなる。不均衡なつり合いは、変化変容を生み出し、膿出し効果もある。家族の行方が楽しみだ。